「また部下を怒ってしまった…」
「なぜ私はすぐにキレてしまうのだろう…」
感情的に怒ってしまい、後悔の念にさいなまれている方も多いのではないでしょうか。怒りの感情にはメリットとデメリットがあります。うまく付き合うことができれば人を正しい方向へ導いてくれる一方で、制御を誤ると身を滅ぼす原因になってしまうことも。
怒りの感情をうまくコントロールするにはどうすればよいのでしょうか。今回は怒りとうまく付き合うための方法に迫っていきます。
そもそも怒りの感情とは?
愛犬からお気に入りの玩具を取り上げようとすると、それまで可愛らしかった顔が、鬼のような形相に一変し、飼い主に敵意を向け今にも噛みつこうとし始めます。犬を飼っている方であれば、よくある光景ではないでしょうか。
このように動物が怒るときは、何かを守ろうとしたり、攻撃したりするときです。人間も同様であり、道端でカバンを取られそうになったら、怒鳴り声をあげて抵抗するでしょう。
その際、すぐに動けるようにする必要があるため、筋肉に血液を運ぶことで体を活性化させなければなりません。
その点、脳の構造上では怒るときにノルアドレナリンが発生し、血圧や心拍数が上がる仕組みです。人間においてもこの怒りのメカニズムは同様だとして知られています。
また、怒ると相手もどのような反応をするかわかりませんよね。部下を怒ったら、今までの不満を言い返されたり、突然退職されたりすることがあるかもしれません。いずれにせよ、上司としてはたまったものではありません。
実は怒ると、感情の中枢である扁桃体が反応して、不快感や恐怖まで感じることも知られています。つまり、さまざまな感情が入り乱れた状態が怒りという感情なのです。
怒りのメリット
人間の感情として存在する以上、怒りという感情にも意味があります。怒りの感情が持つメリットについて考えてみましょう。
メリット1.危険やトラブルを回避できる
怒りは、トラブルや危険を回避するために必要な感情です。
たとえば、子どもが家の壁に落書きをするとしましょう。親御さんが怒らなければ、家中が落書きだらけになってしまいます。
また、子どもが無断で進入禁止の川場に遊びに行こうとする場面もありえます。そのとき怒って止めなければ、川で溺れて死んでしまうかもしれません。
そのほか、工事現場で工具の使い方を間違っている新米がいれば、先輩や同僚が怒って止めないとケガをしてしまう可能性があります。
私たちが安全に暮らせるのは、怒りという感情に守られているからだといえるでしょう。
メリット2.要望を通せる
部下に仕事を教えても全く覚えてくれないこともありえます。独り立ちできないと上司だけでなく関係者に迷惑がかかってしまいます。
このとき、上司が部下に怒ってこのままではいけないことを伝えたとします。怒られて不快な思いをしない人間はいないでしょう。したがって、怒られないように仕事を覚える努力をせざるを得なくなります。
このようにして、怒りという感情によって自分の要望を通すことも可能です。
メリット3.モチベーションを高められる
人間は誰しも完全に正しい考えを持っているわけではありません。感情にまかせて怒ってしまっている人もいて、怒られている側に非がないことも十分にありえます。
たとえば、最近ではカスタマーハラスメントが流行っているようです。カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先から理不尽な要求や言動を繰り返す嫌がらせです。
そんなとき、理不尽に怒られた立場としても、不当な扱いに対して怒りの感情が湧くものです。その怒りをうまく原動力として活用できれば、モチベーションを高めることができます。
たとえば、商品やサービスに対してクレームを受けたのであれば、改善点を徹底的に洗い出し、品質を高めるのです。結果として怒りの感情によって、従来にはなかった価値を生み出せることになります。
怒りのデメリット
怒りには大切な役割がありますが、コントロールできないとデメリットをもたらすこともあります。怒りのデメリットについて確認しておきましょう。
デメリット1.健康に悪影響を及ぼす可能性がある
怒りによって自分の立場を守ったり、他人に訪れる危機を知らせたりすることができますが、限度を超える怒りは人間に悪影響をもたらすことがあるので注意が必要です。
医療関係者の中には、怒りをためる人は病気になりやすいという見解を示している方も見受けられます。さらに怒りは突然死の原因となる不整脈を引き起こす可能性があるという考え方もあるようです。
人間の体は、免疫によって病気から身を守っています。しかし、ダニや花粉などの異物に対して過剰に反応し、アレルギー症状が引き起こされることがあります。
怒りの感情も免疫と似たようなものだといえます。健康にまで悪影響を与える可能性があるのであれば、うまく制御する術を身に付けておくべきでしょう。
デメリット2.周囲からの信頼を失う
学校で生徒のことを真剣に考えている先生に怒られた生徒は、基本的には自分の非を認めて行動を改めようとするものです。その後、自分の成長を実感することがあれば、怒られたことに対して感謝の気持ちも抱くケースもあります。
うまく叱れる先生は、理性を忘れずに怒っています。感情をコントロールしたうえで怒れば、叱ったあとのフォローもおざなりにならず、生徒との関係もうまくいくのでしょう。
しかし、感情的に怒ってしまうケースでは、単に相手にストレスを与えるだけの可能性が高いです。自分をコントロールできていないと言わざるを得ません。
自分の感情をコントロールできない人には、周囲をコントロールすることは難しいでしょう。怒られた人が努力をしても認めてもらえないのであれば、結果として信頼を失ってしまう可能性があります。
怒りとうまく付き合う3つの方法
感情的に怒ってしまうのが悪いことだとわかっていても、人間誰しも我を失ってしまうこともあります。しかし、対処法を知っておけば怒りの制御がうまくいくケースも少なくありません。ここからは怒りとうまく付き合う上で知っておきたい方法を3つ解説していきます。
方法1.問題を回避する
突然雨が降ったり、交通渋滞に巻き込まれたり、自分の力ではどうにも回避できないトラブルがあります。
トラブルだけでなく災害も同様です。
最近では新型コロナウイルスが発生し、やり場のない怒りを抱えている方も多いのではないでしょうか。しかし、いくら災害に対して怒りを覚えても、相手は人間ではありません。損害賠償請求を申し立てることもできません。
したがって、怒っても意味がないことには、怒らないと割り切る考え方が大切です。
たとえば、何度怒っても悪習慣をやめない人に対して怒っても、無駄にエネルギーを消費するだけになってしまうこともあります。目の前に巨大な岩があったとき、素手で動かそうとするのと同じでしょう。
もし、仕事の関係者や親しい仲でなければ、その人と関わることを辞めれば、怒る必要はなくなります。岩を動かすのではなく、そのそばをすり抜けていくのです。
方法2.代替え案を模索する
私たちが日常生活で経験する出来事の中には、問題を放置したままにできないケースも当然あります。
そのような場合、怒ることをやめるだけでは状況は改善しません。怒る代わりに代替え案を検討するようにしましょう。
たとえば、学校から帰ってきた子どもが、流行りの新作ゲームソフトを買ってほしいとおねだりしてきたとします。節約をしたいがためにこれを拒否すると駄々をこねてしまいました。このような出来事で、子どもに怒ってしまう親御さんもいるのではないでしょうか。
このとき、単に子どもを放置して静まればよいですが、壁を叩いたり、大声で叫ばれたりしてはたまったものではありません。親御さんとしては、ますます怒りが湧いてきてしまうでしょう。
そこで考えられる有効策として挙げられるのが、代替え案の提示です。ゲームを買ってあげる代わりに、おいしい食べものを食べさせてあげるのです。交渉がうまくいけば子供も騒ぐのをやめてくれるかもしれません。ゲームソフトを購入するよりも費用を節約できる可能性も高まります。
このように理性的に状況を対処していくことで、怒りを制御できることがあります。怒
りたいと思ったら、代替え案を検討するクセをつけてみましょう。
方法3.怒りを抑える言葉を自分に投げかける
初めは議論をしているだけのように見えていたのに、いつの間にかつかみかかるくらいのけんかになることもあります。そんな光景が目の前で繰り広げられたとき、関係者であれば仲裁に入ってくれるものです。
しかし、周囲に誰もいなければ、落ち着かせる言葉を投げかけてもらえません。つまり、自分で自分に落ち着かせる言葉を投げかける必要があります。
怒りやすい人は、いざというときに怒りをコントロールできるように、怒りを抑える言葉を用意しておくとよいでしょう。
たとえば、「まあ、いっか…」「帰宅したらバラエティー番組を見よう」「こういうこともある」などさまざま考えられます。
落ち着く言葉は人によって異なるかもしれません。いろいろな言葉を日ごろから自分に投げかけてみて、少しでも怒りが静まる気配があれば、頭の片隅にストックしていくとよいでしょう。
怒るべきか、怒らないべきかを判断しよう!
以上、怒りの感情とは何かをはじめ、怒りとうまく付き合う方法を解説しました。怒りは人間を守るために不可欠な感情であるとともに、制御を誤ると諸刃の剣となってしまう感情であることが、あらためておわかりいただけたのではないでしょうか。
したがって、怒るべきか、怒らないべきかという判断を私たちは日ごろから突き付けられることになります。そのため、コミュニケーションに迷ってしまう方も多いに違いありません。怒るときの基準まで知っておくことが重要です。
アンガーマネジメントの専門家の見解によると、「後悔」が一つの基準になるといいます。たとえば、怒って後悔するのであれば怒らない、怒らずに別の問題が発生して後悔するのであれば怒るという具合です。
このように一つの基準を知るだけで、怒るときの判断が楽になったという方もいるのではないでしょうか。
仕事や家庭などで怒りの感情が沸き上がったときは、あらためて後悔という判断基準をもとに冷静な判断ができるように心がけてみてください。
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