上司や同僚に言われた何気ない一言で落ち込んだり、大きなプロジェクトを任されたりして、不安の感情に押しつぶされている方もいるでしょう。 実際に問題が起きたわけでもないのに、仕事のパフォーマンスが下がってしまうこともあります。 不安に振り回されないようにするには、どうすればよいのでしょうか。今回は、不安の感情について深堀りしつつ、不安を抱え込む悪習慣を減らす考え方を中心に解説していきます。
そもそも不安とは?
厚生労働省によると不安とは、精神医学の観点から、対象のない恐れの感情であるといわれています。 不安と似た感情に恐怖という感情がありますが、恐怖という感情は対象があるときに生じます。 たとえば、登山をしているときにクマに遭遇したときに抱く感情は恐怖でしょう。この場合は、クマが恐怖を抱く対象です。 その一方で不安は、目の前にクマのような凶暴な動物がいるわけでもないのに、ふとしたときに心中に浮かび上がってきます。 仕事を失ってしまう可能性や、家族が亡くなってしまう可能性を想像すると、誰しも不安を感じるのではないでしょうか。 視覚的な情報から湧き上がる恐怖であれば、対象が目に入らないようにすることでコントロールできます。 しかし、不安の場合は視覚的な情報がなくても浮かび上がってくるので、その点で比較するとコントロールしづらいといえるでしょう。 参考:「気持ちが落ち着かない、どきどきして心細い」症状になるのはどうしてですか(厚生労働省)
不安に関連する症状
不安を感じるのは人間として正常な反応です。しかし、不安が大きくなってしまうと、不安障害を発症して、行動や心理面に悪影響が生じることがあります。 たとえば、全般性不安障害という病気があります。全般性不安障害とは、日常的に感じる不安を慢性的に抱き続ける病気です。物事に集中できなくなったり、睡眠に悪影響を及ぼしたりします。 ビジネスでは集中力が必要となる場面が多く、ミスをすると会社に損害を与えてしまう局面もあるでしょう。 現場作業を専業とする方であれば、会社に損害を与えるだけでなく、個人や関係者がケガといったトラブルに見舞われてしまう可能性もありえます。 ビジネスだけに限らず、日常生活における車の運転でも、集中力が求められます。赤信号を見落としてしまえば、致命的な事故を引き起こしてしまいかねません。 したがって、日ごろから不安を過度に増大させ、深刻な症状が発生しないよう注意しなければなりません。 参考:全般性不安障害とはどんな病気?(医療法人東横会たわらクリニック)
不安を抱え込む習慣を減らす考え方
不安を抑え込もうとしても、ネガティブな感情がどうしても湧き上がってしまうことがあります。不安を抱え込む習慣を減らすにはどうすればよいでしょうか。 不安を抱え込む習慣を減らす考え方を3つ解説していきます。
考え方1.過剰に悩みすぎない
不安なことがあると、最悪のケースを際限なく思い浮かべてしまいがちです。 しかし、悪いことを考えても一向に状況は改善しません。それどころか、悪いことを考えた分だけ、精神的な疲労が蓄積されてしまいます。 反対に考えれば、最悪なケースを見て見ぬふりをすれば、不安が膨れることはありません。 ただ、不安から過度に目を背けると、回避できるリスクも回避できなくなります。ある程度不安なことについて、自分で対処できる行動や準備をしたら、それ以上は深く考えないようにすることが大切です。
考え方2.心配事はほとんど実現しない
心配したことが本当に実現するのであれば、心配することは重要になります。しかし、た くさん心配したのに、結局何も起きなかったという経験はよくあることです。 ちなみに海外の研究では、心配事の約8割が起こらないという見解が示されており、日本でも話題となっています。 つまり、不安に思っていることのほとんどは実現しないことがわかります。不安が湧き上がってきたときは、過去のことを思い浮かべてみましょう。 今まで不安に思ったことが実現してこなかったことを心の中で再確認すれば、安心感が生まれるはずです。
考え方3.不安をモチベーションに変える
不安という感情にはネガティブな印象がつきまといますが、観点をかえると人間が生きるうえで心強い存在であるとわかります。 なぜなら、不安があることによって私たちは身に降りかかる危険性を察知できるからです。不安な感情が湧きおこらなければ、リスクに対して対策を講じることはできません。 不安に振り回されて悩んでいる時間がたくさんあるのであれば、その時間を対策に費やしたほうが明らかに建設的です。 たとえば、仕事のプレゼンテーションが不安で悩んでいるのであれば、資料に図や表を追加してクオリティーを高めたり、実際にシミュレーションして説得性に欠ける部分の説明を補強したりします。このように不安をモチベーションに変えていけば、ビジネスでも良い結果が得られる可能性が高まっていくでしょう。
日本における不安の実情
不安を感じているのは自分だけと思うかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょうか? セコム株式会社による「日本人の不安に関する意識調査」では、日本人の不安に関する現状がまとめられています。調査期間は2018年12月3日~5日であり、調査対象は20代以上の男女計500名です。 「最近不安を感じている」と回答した方の割合は72.4%であり、日本人の大多数が不安を感じていることがわかります。この結果を聞くと、人間が不安を感じるのは意外と当たり前だという気づきが得られ、少し安心できるのではないでしょうか。 不安の内容については、1位が「老後の生活や年金」、2位が「健康」、3位が「地震」という結果でした。 老後に関する不安は、いかに先進国といわれてきた日本においても、避けられないという ことがわかります。一般的に感じる不安とは別に、老後に焦点をあてた不安についても、別途解消法を心得ておく必要がありそうです。 参考:第7回「日本人の不安に関する意識調査」(セコム株式会社)
不安に関するQ&A
不安について気になる疑問をQ&A形式でお答えしていきます。
老後に対する不安を減らす対策は?
セコムの調査では老後に関する不安を持つ方が多いとわかりました。老後に対する不安を減らすための対策も確認していきましょう。 老後の生活は目の前に具現化することはできません。そのため、漠然とした想像によって不安がかき立てられるのでしょう。 不安を減らすために見て見ぬふりをするという考え方もありました。また、不安のほとんどは実現しないという定説もありました。しかし、老後は若いうちに亡くならない限り、必ずやってきます。 したがって、老後のリスクを想定して対策を練っていくことが、不安を解消するために大切なことだといえるでしょう。 たとえば、老後では健康を害するリスクが高まっていきます。仮に大きな病気を患った場合、入院費や通院費がかかってしまいます。 しかし、その事実を受け止めて医療保険に加入しておけば、万が一のケースに保障してもらえます。現在は死ぬまで保障してくれる医療保険もあり、老後の対策として検討しない手はないでしょう。 一つひとつの不安に対策を講じていけば、少なからず老後の不安を和らげられます。
不安で眠れないときは?
早起きして仕事に向かわなければならないのに、全く寝つけなくて困ったという経験をした方も多いことでしょう。 “私たちの睡眠は、安心な状態になったら眠る仕組み、疲れたら眠る仕組み、夜だから眠る仕組みの3つで調節されています。” 厚生労働省のメンタルヘルスサイトでは、心が安らいでいる状態も睡眠の仕組みに関係していることを明かしています。 引用:「眠れない症状」になるのはどうしてですか(厚生労働省) では、不安で眠れないときはどうすればよいのでしょうか? やっていけないことが眠れないことに対して焦ることです。 人間は、自律神経によって意思とは無関係に体の機能を調整しています。自律神経には交感神経と副交感神経の種類があります。 睡眠に移行するには、副交感神経が優位にならなければなりません。眠ろうと焦るほど緊張感が高まり、交感神経が優位になってしまうので、かえって眠れなくなってしまいます。 副交感神経はリラックスしているときに優位になるそうです。したがって、不安で眠れないときはリラックスすることを意識しましょう。 すぐに取り入れられるリラックスの方法として、呼吸の意識が挙げられます。不安な状態では呼吸が浅くて速くなってしまいがちです。 お腹からゆっくりと呼吸をすれば、副交感神経が優位になるといわれています。不安で眠れないときに試してみるとよいでしょう。
不安を減らすために最も大事なこと
以上、不安を減らすための考え方を紹介しました。ただ、考え方を変えても不安が湧き上がってしまう方もいるでしょう。 不安を減らすためには行動が重要です。 人間は不安を抱くときに脳内でノルアドレナリンが分泌されることが知られています。 厚生労働省の健康情報サイトによると、ノルアドレナリンとは、人体が激しい感情によってストレスを感じたりするときに、交感神経の情報伝達物質として放出される物質です。交感神経の活動が高まると、血液や心拍数が上がり、体が活動しやすい状態になります。 このことが根拠であるかは定かではありませんが、ノルアドレナリンはピンチを脱するために行動を促す物質だという見解も精神科医によって示されています。 したがって不安を和らげるためには、脳内物質の発生に従って素直に動き出すことも効果的でしょう。 たとえば、仕事で提出物の締め切りが頭の中で重くのしかかっているのであれば、提出ま でのスケジュールを具体的に落とし込んでみましょう。提出までの目途が立てば、締め切りに間に合うことがイメージされ、不安はスッと消えていくはずです。 今回紹介したように、日本でも多くの方が不安という感情とともに日常生活を送っています。人間生きていれば不安な感情を制御できなくなってしまうこともあるかもしれません。 漠然とした不安に振り回されて抜け出せなくなってしまったときは、悶々と悩んで非生産的な時間を費やしてしまうより、何か行動できることはないか冷静に考えるようにしてみましょう。 参考: e-ヘルスネット(厚生労働省) 不安を感じるとき、脳の中で何が起こっているのか(DIAMOND online)
コメントを残す